ハクバ・ブルーイング・カンパニーのダンさん ハクバ・ブルーイング・カンパニーのダンさんとは? ダン・コウバーンさんはHBC(ハクバ・ブルーイング・カンパニー)の誇り高き創設者兼オーナーです。その名前が示すように、HBCはクマとサルと共に白馬にあります(まさに、そのとおりなのです)。小規模の新しいビール醸造所ですが、ダンさんが精密に調整した500Lの醸造設備は2年目を迎えています。ダンさんは醸造家であるだけでなく、彼が醸造する定番ビール5つの「父」でもあります。彼の子どもたちである5つのビールを熟知しているのです。もちろん、彼のお気に入りのビールたちです。 白馬に移り住みHBCを創設する前、ダンさんはケンブリッジ大学で科学者として学んでいました。し2000年代初めにロンドンで起きた自家醸造のクラフトビール革命に夢中になり、直ぐに自家醸造ビールの虜になりました。そしてエデン・ブルワリーに就職しました。 かつてダンさんは自身の醸造所をもつことを夢見ていました。そして、現在までHBCをスタートさせるために膨大な書類作業を行ってきました。彼が使用している設備をスムーズに使いこなし、5つのビールたちを完成させました。ダンさんの経験やHBCを現在の形にするまでの困難についてお話を伺いました。彼の話は、同じような夢を持つ人々にとって、とても励みになると思います。ダンさんはクラフトビールの販売に情熱をもち、そしてお手本となるような方です。 HBCの特徴 「醸造所施設内の井戸から直接汲み上げた白馬の清らかな水とイギリスの酵母と麦芽をブレンドして、素晴らしい、しかしお手頃価格のビールを醸造することが目標です。私は、白馬の自然と山が大好きです。地元のビール人気から感じられるエネルギーとファン(楽しさ)を表したいと思っています。 我々の主要マーケットは、年間を通して白馬にやってくる日本人と外国人観光客です。しかし、ビール樽やボトルを全国に出荷したいと考えています。現在は、地元の季節的要因によって高まった需要に対応しているだけですが、長野や松本、金沢、東京でも我々のビールを販売し始めています。」 -ダン インタビュー タイヘイ:どのようにロンドンから白馬の山々に辿り着いたのですか。 ダン:1999年から2001年まで山梨に住んでいました。その期間、冬は週末にスキーをしに何度も白馬を訪れていました。ロンドンで9年過ごした後、山と自然、雪に囲まれた生活に戻りたいという衝動を抑えられなくなりました。 タイヘイ:ビールという美術品の科学者になったダンさんは、ご自身のビールを開発する上で、科学の知識は、どのような助けになりましたか。 ダン:大学で幅広く科学について学びました。この知識は醸造所を新たに開設するにあたって、とても役に立ちました。化学と微生物学の基本を理解することが重要なのは明らかです。しかし、新規ビジネスには様々なスキルが必要です。電気的問題と流体力学の問題両方を解決したり、圧力や揚程(ポンプが水などの流体を揚げる高さ)を算出したりするために、私が持っている物理学の知識が度々役に立っています。 タイヘイ:ご自身をどのような科学者だと思いますか。Dr. Jekyllか、Mr. Hyde、Dr. Frankenstein、Dr. Peter Venkman、Doctor Spockのいずれかで言うと、どなたに当てはまりますか。 ダン:(笑)!絶対にVenkmanです。 タイヘイ:醸造研究でダンさんが作った最高のビールについて教えてください。 ダン:今まで醸造した中で気に入っているのは2つあります。一つはブラックIPAです。スーパーホッピーと優しいカカオ/チョコレートモルツの風味が非常に良いバランスのビールです(残念ながら、1度しか作れてなく、同じように作るのは不可能でしょう)。もう一つは私が今でも作っているセッションIPAです。 タイヘイ:天然酵母を培養し使おうとしたことはありますか。 ダン:いいえ、ワイルドビールやサワービールに興味がありません。しかし、まったくない、とは決して言いませんが。 タイヘイ:米国の大学生3人が、平均の3週間に比べて、9倍以上速く発酵させることができると言っています。ダンさんの科学知識のバックグラウンドから、このことについてどう思いますか。 参考:ペンシルバニアの大学生、ビールの発酵を9倍速める(フィラデルフィア・マガジン) ダン:彼らがどのように結果を出したのか、(大手がタンクを高速で回転させる方法とは対照的に)クラフトビールの風味に悪影響はないのかについて聞いてみたいですね。工程を容易にするために、酵母細胞の表面全体に糖分と栄養素を多く流していると思いますが、詳細な情報を知りたいです。 タイヘイ:このビール革命は、業界の状況をどのように変えるでしょうか。独立醸造所にどのように影響するでしょうか。 ダン:西洋で起きていることに注目し、日本にどのような影響があるかを検討する必要があると思います。大手が市場シェアを失い、不安になり、中小企業や品質の良いクラフトビール醸造所を買収するでしょう。そして、自社の開発企業を排除し、より多くの小規模醸造所が中規模企業を目指して開発できるようになります。イギリスは既にクラフトビールが飽和状態にあります。人気のビールが無い小規模醸造所が大半であり、キャスクで利益を上げようと苦戦しています。樽ビールの価格は競争により下落しています。市場がもっと安定したレベルに戻る前に、日本では、短期的な流行で終わってしまうと思います。しかし現在のクラフトビールの販売量は余裕で超えるでしょう。 タイヘイ:科学の話はこれで終わりにして、HBCについて教えてください。 ダン:まだ設立して2年です。なので、まだまだこれからです。ここまでは、とても楽しい経験でした。今後、順調にいけば、ストレスは少なく、楽しみはもっと増えていくでしょう。私たちが目指すのは、常にお客様にワクワクして楽しんでいただける良質なビールを、お手頃価格で提供することです。スタイルガイドラインに厳格に従ってはいませんが(私たちのビールはすべて、イギリスの麦芽、アメリカのホップ、純粋な日本の山の水で作られています)、私たちが美味しいと思うビールを作ることに重点を置いています。 タイヘイ:白馬の水はビール醸造にとって素晴らしい要素であるのは何故ですか。 ダン:白馬の水は、蛇口からそのまま飲んでも非常に美味しい水です。混じりけがなく、ミネラルの含有量も低く、シンプルな成分です。白馬の水を利用している村では、政府が規制するまで、水道水に塩素さえ添加していませんでした(現在は最小限の塩素を添加しています)。まさに、アルプスのピルスナースタイルの水質ですが、ビール醸造にとって非常に良質な要素となっています。私はダークビール用にバートン化させていましたが、この素晴らしい水を活かしたいと思い、シンプルであることに決めました。マッシュのPHは常に4.2と自然のままです。 タイヘイ:私たちがお話したような、新しいビールはありますか。 ダン:現在は、スキーシーズンに向けて在庫を増やしています。そのため、タンクはすべて、当社の定番ビールで満タンです。ちょうど今、ホッピーな白ビールのレシピをプリントアウトしたところです。白馬で育った小麦を豊富に使った1品として、冬前に醸造したいと思っています。 タイヘイ:そのビールを、東京のどこでいつ、飲むことができますか。 ダン:Goodbeer Faucetsが、私たちのビールの最初の樽をタップで提供しています(非常に良質な状態で提供していると聞いています)。彼らはペールエールやIPAも現在ストックしています。私たちも、新橋の信州おさけ村に、ボトルや時にはドラフト(先週の時点では)をストックしています。 タイヘイ:イギリス出身なのに、なぜアメリカのホップが好きなのですか。私は個人的にはイギリスのファグル・ホップを使ったペールエールが好きです。 ダン:私もファグルで作った良質なゴールデンエールが大好きです。しかし、ホッピーなビールの面白さに気づかせてくれたのは、アメリカのホップでした。イギリスのビールにホップの風味を加え、美味しいビールに仕上げるのは難しいと思います。しかし、アメリカのホップは、もっとシンプルではっきりとした(わくわくするような)風味があり、さらに香りもあります。シトラ、アマリオ、モザイク、アザッカなどのホップはビールの風味に画期的な味わいを加え、クラフトビール初心者が楽しみやすいものに仕上がります。 タイヘイ:好きな醸造方法と、飲んで好きなビールに違いはありますか。 ダン:まったく違います。飲むのが大好きなビールは、醸造するのに手間がかかります。一番簡単に醸造できるビールはアンバーエールですが、幸いなことに私はアンバーエールも大好きです。深い麦芽の特徴とチヌークがもたらすホップのもう一つの世界が好きです。 タイヘイ:お気に入りのホップと麦芽を教えてください。 ダン:モザイクとマリスオッターです、モザイク・ホップはさまざまな風味と香りを作り出し、常に楽しめるビールになります。私はこの特徴がとても好きです。マリスオッターは特徴的で、素晴らしい豊富な風味があります。残りの人生で1つの麦芽で醸造したビールしかを飲めないのなら、マリスを選びます。 タイヘイ:自家醸造と製品醸造とで、一番大きな違いは何ですか。 ダン:エンジニアリングです。自家醸造はそのすべてか創作的です。うまくいかなければ、最小限の費用で実験をする自由があります。製品醸造は、設備をいかに最良の方法で使うか、すべてをどのように統一して、安定を保つかであり、同時に緊急時のポンプの外し方やお気に入りのホップが異性化中に詰まってしまった場合の冷却器の問題の解決方法についても理解している必要があります。 タイヘイ:醸造所をオープンして2年以上経ちます。最悪な出来事を教えてください。 ダン:新しい醸造所で最初の数日はとても大変で、問題も多く、長い毎日でした。楽しいことは何もありませんでしたが、良質なビールを醸造することができました。現在では7,8時間から12時間かけており、設備はスムーズに問題なく動かすことができています。設備をきちんと整えることは非常に重要です。最良の方法を繰り返すこと、これは忘れてはならないことです。また、スタッフ教育もクラフトビールの工程を再現するために重要です。 タイヘイ:「Will work for beer」プログラムはありますか(私たちに部屋代と食事代を提供してくれる人を探しています)。 ダン:(笑)!まだありません。ビールは商品性が高いコモディティですが、シックスパック(6缶パック)か2缶パックを取引する多くの仲介人の協力を得ています。 タイヘイ:エデン・ブルワリーでの経験は、ダンさんにとってどのようなものでしたか。 ダン:それは素晴らしい経験でした。エデン・ブルワリーは5年目で、いまだに成長しています。私の醸造所の将来を見据え、どのような問題が生じるのかを考えるのに、とても勉強になりました。同時に、エデン・ブルワリーは日本市場への参入の動きを見せています。そのため、彼らにとって私は役に立つ窓口です。 タイヘイ:イギリスの醸造所で働き、現在は日本で醸造所のオーナーです。違いや似ている点はありますか。 ダン:たくさんあります。プロセスは同じですが、税務、法律、安全性に関する規制などは非常に異なります。例えば、エデンでは、もしうまくいかない場合、まったく迷いなく、早い段階で廃棄してしまいます。しかし日本では廃棄するというのは一大事で、最初の段階から、衛生面などについて細心の注意を払わなければなりません。 タイヘイ:ビール愛飲者にHBCについて知ってほしいこと、HBCの背後にいるクレイジーな科学者について知ってほしいことは他にありますか。 ダン:なぜ白馬なのか、についてです。白馬は日本で最も美しい山間の町の1つです。冬には山は雪で覆われ(ほとんどのスキーヤーは日本のリゾートで楽しみます)、さらに夏には都市部の人たちにとって素晴らしい静養所になります。それと、美味しいビールもあります。 タイヘイ:最後の質問です。ボトルを使っていますが、ビールをろ過していませんよね。ビールを注ぐ方法をお客さんに説明するのは難しいですか。 ダン:日本の消費市場はボトルのコンディションや酵母の沈殿についてまったくわかっていないので、最初は大きな悩みの種でした。しかし日本の消費市場は、信じられないほど寛容でおおらかです。最初はビールの注ぎ方にずいぶんとやかく口を出しました。しかし今はそのようなことはありません。ほとんどの日本人がグラスに酵母が入ることを理解しているので。たぶん、「クラフト」と名前についた、ろ過していない酒だと思っているのだと思います。 Information ブリュワリー Hakuba Brewing Company 地図 ホームページ http://www.hakubabrewery.com/ 電話番号 080-8905-4362 Facebook https://www.facebook.com/hakubabrewingcompany/ Instagram 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